過去からの贈り物 ~神奈川県立図書館のこと~|「図書館」(仮称)リ・デザイン Advent Calendar 2020

今から70年前、社会教育局長だった西崎恵はその著書「図書館法」のなかで、新しい図書館への期待を述べています。その一つがレクリエーションに資するということです。「国民の図書館に対する要望が、学術研究とか教養とか言ったものよりもっと寛いだもっとやわらかい楽しみをも含んできたためで、これに応ずるために、図書館にレクリエーションの面を加えてきたのである。」と書かれています。

図書館法が施行されて4年、1954年に神奈川県立図書館は誕生します。そして、その図書館には県立音楽堂が併置されます。図書館には通常の整理課、奉仕課、視聴覚課に加え、文化課があり、そこで、県立音楽堂に関する事務を行っていました。音楽堂の利用申請の宛先は県立図書館長だったんです。

県立図書館は、喫茶コーナーのある渡り廊下で音楽堂の2階ホワイエにつながり、利用者も行き来することができました。残念ながら今は音楽堂は別の組織の運営です。渡り廊下もふさがっています。

県立図書館は前川國男の設計です。前川事務所では、図書館の家具も設計します。閲覧室の椅子は、前川事務所の水之江忠臣の設計で天童木工が作成します。今でも天童木工の定番商品です。書架も低く抑えて、椅子に座ってゆったり寛ぐことができました。残念ながら、神奈川県立図書館には水之江・天童木工の椅子は一つも残っていません。背の高い書架が並び、寛げる空間ではなくなりました。

最近再び、「公共図書館でゲーム」や「学校図書館はカラフルな学びの場」など、レクリエーションを図書館で再構築していく取組みや理論に注目が集まっているように思います。30年後が楽しみです。

2020年12月3日

            神奈川県立図書館を愛するOB  林秀明  (CC BY SAで公開)