リ・デザインに向けての「図書館」企画|「図書館」(仮称)リ・デザイン Advent Calendar 2020

 『図書館情報学用語辞典 第5版』(日本図書館情報学会用語辞典編集委員会編、2020)によれば、「図書館」とは「人間の知的生産物である記録された知識や情報を収集,組織,保存し,人々の要求に応じて提供することを目的とする社会的機関」とされている。

 ここでは、図書館が扱う対象は「記録された知識や情報」となっている。この点、リ・デザイン会議の議論や、筆者が「図書館機能の再定置」で主張していることなどは、すでに先取り的に定義されていると言えよう。そして大学図書館の状況を念頭に置けば、この定義は決して偏頗なものではない。むしろバランスの良い的確なものとも言えよう。

 結局、「今の形の紙の書籍」は、たまたまこの200年ほどの間、「記録された知識や情報」を扱いやすかった媒体であった、ということに過ぎない。「紙の書籍」を包含しつつも、そこに固着せず「記録された知識や情報」の媒体にかかわらず扱っていくことが、定義通りの「図書館」なのであろう。

 一方、全国のほとんどの公立図書館・学校図書館・あるいは大学図書館の一部でも行われている「企画」の多くは、「紙の書籍」をめぐるものが圧倒である。

 そこで、リ・デザインに向けて、「記録された知識や情報」を幅広く対象にする企画を!という提起をしたい。

 デジタルリソース・アーカイブ資料・紙の書籍など、あらゆる「記録された知識や情報」を使い、さらに、モノ資料・空間自体を対象に「知識や情報」を新たに「記録」するという行為がその中で生じても良い。

 そして、その企画の立案・準備・実施を通じて、企画側(図書館職員なのか関係者かを問わない)にこそ大きな変化が訪れるだろう。どういう課題に着目し、企画の効果をどう設定するのか。そして、効果を達成するために、企画側がどれだけの広さと深さで「記録された知識や情報」の全体を把握したり、協力者を求められるのか。では、実施にあたって、どのような環境が必要で、何が欠けているのか。

 おそらく、その過程を通じて、リ・デザインのそれぞれの場におけるディティールが詰まってくるのではないか。もっともこの行論上、企画による効果達成自体は小さな成功である。図書館自体のリ・デザインの素材を発見していくことが究極の目的となろう。

 しかし、上記に留意しながらも、みんなで、オリジナルの、知恵と工夫が沢山詰まった、未来が見える企画を考えたい。
 どんな突き抜けた企画があり得るか、非常に楽しみである。

2020年12月21日

福島幸宏(東京大学大学院情報学環特任准教授)

表示 4.0 国際 (CC BY 4.0)

※筆者による「図書館機能の再定置」の議論については以下を参照
福島幸宏2018「これからの図書館員像-情報の専門家/地域の専門家として」
『現代思想』46-18
「第67 回日本図書館情報学会研究大会シンポジウム記録「デジタルアーカイブと図書館」」
『日本図書館情報学会誌』66-1
福島幸宏2020「図書館機能の再定置」『ライブラリー・リソース・ガイド』31