生涯学習として|「図書館」(仮称)リ・デザイン Advent Calendar 2020

このアドベントカレンダー企画も最終日になりました。実際はこの後もお正月後まで延長されているので、アドベントカレンダーとは何かという定義が揺らいでいます。

アドベントカレンダー企画の時、私は「生涯学習として」というタイトルをつけました。「図書館」(仮称)を生涯学習という視点で位置付けようという趣旨です。何を当たり前と思われるかもしれません。しかし、公共図書館、大学図書館、学校図書館、博物館、公民館他という機関・施設は、それぞれの利用者層やサービス対象の年代を絞る中で、生涯学習という「背骨」が忘れられているのではないかと感じています。

生涯学習は教育基本法に定義されています。(第三条 国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。)これは日本国憲法の基本的人権の中の教育を受ける権利を具体化したものと考えられます。(憲法第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。「教育」と「学習」の理念の違いはひとまず置く)教育基本法の定義は読み方によっては「個人での勉強的な学習」を想定しているようにも読めますが、近年はグループでの活動や体験の中でさまざまな形の学びがあると考えますので、それらの活動も包含していると考えています。

私は「図書館」(仮称)の姿として、「生涯学習が常に行われているフィールド」を考えています。

全ての年代、すべての人がそれぞれの意思で、それぞれのタイミングで、それぞれのテーマで、幅広く学んでいくというスタイルは21世紀の人間の在り方の重要な一つと考えるからです。どのような活動や経験が学びに結びつくかは個人個人で多様なため、そんな「図書館」(仮称)ではありとあらゆる活動やコンテンツ、コミュニケーションが行われることでしょう。

そして「フィールド」としたのは、時間軸、施設、場所やネット空間といった層が重層的にかさなり、四次元的なフィールドとなると考えています。インターネットは時間的、空間的制約を極限まで少なくすることができるようになりました。一方で対面や集まることの有用性もコロナの感染拡大は反面で示しています。この「図書館」(仮称)というフィールドで、だれもが、いつでもさまざまな学びにつながる、体験や活動を行うことができる、参加できるということを保障していくのが、これからの公共の役割と考えています。

そして、この会議に参加している人たちには、その公共をデザインする、担うことを期待しています。日本で図書館法ができてからまだまだ70年しかたっていません。近代の図書館がしょうかいされてからも120年程度です。欧米の近代的な公共図書館も150年~200年程度しかたっておらず、せいぜい3世代か4世代の間のことでしかありません。図書館の資料が1000年以上保存、継承されてきたことを考えると、まだまだこれから新しい形を模索していくことが求められます。生涯学習のフィールドとしての「図書館」(仮称)のリ・デザインは、次の世代のことを考えながら、ずっと行っていく必要があると指摘して、このアドベントカレンダー企画のとりあえずのしめくくりとさせていただきます。

(もう少しだけつづくのじゃ)

2020年12月25日

都留文科大学 日向良和

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