年末年始、生活に困窮する方々に対する支援情報発信のお願い|「図書館」(仮称)リ・デザイン Advent Calendar 2020

 コロナ禍の影響が深刻化する中、昨年よりも寒さの厳しい冬がやってきました。まもなく、年末年始の閉庁期間へと突入します。

 本日は、貧困問題を現在の仕事の中心としているジャーナリストとして、また生活保護政策の決定過程を研究する博士課程院生として、図書館の皆様に一肌脱いでいただきたく、本記事をまとめました。

●セーフティネットの構造

 社会にセーフティネットがあれば、困窮したときに支えてもらえるはずです。ところが日本の場合、セーフティネットが極めて脆弱です。

一般的なセーフティネット3層構造モデルである「雇用」「公的保険」「扶助」において、日本では「雇用」「公的保険」の2層が極めて脆弱なため、自動的に「扶助」しかない状況に陥りやすい構造があります。

そして「扶助」に該当するのは、生活保護・児童扶養手当(ひとり親対象)・生活困窮者自立支援制度(最大1年間、家賃補助のみ)の3制度だけです。

この中で、日本国籍があれば状況と無関係に利用できて生活のあらゆる側面に適用されるのは、生活保護だけです。

●コロナ禍下、厚生労働省の積極的な情報発信

 2020年12月、厚生労働省は画期的な情報発信ページを公開しました。

厚生労働省:相談支援や生活保護などの生活支援のご案内

 「生活保護を申請したい方へ」というバナーをクリックすると、こちらのページに遷移します。そこには「生活保護は国民の権利」「生活保護を必要とする可能性は誰にでもある」「ためらわずにご相談ください」と明記されています。

厚生労働省:生活保護を申請したい方へ

私から一つ追加したいのは、「自動車を持っていても申請できるし保護開始される」ということです。現在の生活保護のもとでは、自動車の保有や運転は原則として禁止されていますが、もともと保有については半年間の猶予が認められています。また行政訴訟や審査請求では、車の保有を認める結果が相次いでいます。

●福祉事務所に行く場合は、支援者の同行がベスト

 実際に福祉事務所を訪れると、典型的な水際作戦に阻まれる可能性もあります。極力、支援団体の方々に同行していただくことをお勧めします。年末年始に急遽、支援を必要とする場面もあるでしょう。

(一社)社会的包摂サポートセンター:年末年始における生活困窮者支援活動の全国一覧をアップします!

●「FAXで生活保護を申請してしまう」という方法も

 年末年始に向け、一般社団法人つくろい東京ファンドが、生活保護の申請書をオンラインで作成できるサービス「フミダン」をリリースしました。

フミダン: https://fumidan.org/

 フォームを埋めていくと、申請書類のPDFが作成されます。ダウンロードして印刷すれば、申請の準備が完了します。そのPDFを福祉事務所に持参、FAX送信、郵送などの手段で申請すれば、申請手続きは完了です。。

「フミダン」は東京23区限定で、年末年始期間、福祉事務所にFAXで申請書を送信する機能を試験運用する予定です。

役所の閉庁中であっても、FAXで申請書を送付しておけば、その日時が申請日時となります。
 生活保護が認められる場合、保護費(住居費を含む)は、申請した日に遡って支給されます。たとえば「12月30日に申請しておけば、12月の2日分の生活費と、12月の家賃補助1ヶ月分が支給される」というわけです。

●「困ったときには図書館へ」を、今こそ現実に

図書館の閉じられたドアに「生活に困っている方は、こちらへ」というリンク集や、近隣の支援団体の連絡先の案内などがあれば、「図書館は具体的に自分を助けてくれた」という実績に基づく信頼が生まれることでしょう。

この冬は、たった一枚の掲示やたった一言の案内が、誰かの命や人生の成り行きを変えるかもしれません。

ぜひ、「困ったときには図書館へ」を現実にするため、一肌脱いでいただけないでしょうか。

2020年12月27日

みわよしこ(フリーランス・ジャーナリスト)

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