市民発信のブログ講習会、ネット生活の原点|「図書館」(仮称)リ・デザイン Advent Calendar 2020

2020年12月30日、新型コロナウイルス感染症の影響は留まるところを知らない。むしろ、東京都に限らず全国的に感染者数はうなぎ上りといった表現が適切だ。そんな中でも、2020年の図書館は、人間が挑む挑戦と新しい価値創造のために貢献し続けている。医療従事者に限らず、図書館関係者を含めて多くの方が、なるべく生活に影響が出ないように現場で勤務されている。同時に労働者の立場ではなく、ボランティアとして様々な課題を解決しようと努力している人が大勢いる。きょうの日本国内では、そんなことすらも忘れ去られているように思えてならない。

きょうから30年後、2050年12月30日の「図書館(仮)」は、2020年と同じように人間が挑む挑戦と新しい価値創造のために貢献し続けられているだろうか。例えば、行政の資金難で公立図書館の建物は存在しなくても、媒体を問わない「情報」を多種多様な観点でまとめながら、利用者に提供できる、次世代司書(仮)も同時に存在できるのだろうか。

もっぱら自分自身は司書ではないが、そんな人間でも「図書館(仮)」で何ができるのかを常に自問自答できるきっかけの場を存在させる必要性を感じている。付記するのであれば、官民などというありきたりな枠組みではなく、0歳から100歳超までを含めて“自分たちが声をあげ、他者と共存しながら”空間を創っていかなければならない状況になっている。

インターネットやブログが数多く開設され始めた時期、ちょうど2000年代あたり、街中の公民館ではノートパソコンを持ちより、市民主催の講習会が多く開催されていた。講習会には、老若男女問わず多くの市民が参加し、市民活動の発信に勤しんでいたころでもある。はじめてブログを開設する方は、IDの取り方からレクチャーを開始し、写真・文章の投稿から始まり、編集完了まで一体的に学修するプログラム。市民文化団体連合会の主催ということもあり、参加費は無料。当時としては珍しく自分を含めて20人くらいが参加していたように記憶している。

自身がウィキペディアに触りだしたのもちょうどこの時期である。ブログで編集作業のとりことなった私は、同じ時期にウィキペディア日本語版に触れることになった。正直、どちらが先かどうかは覚えていない。

さて、自身が日本語版の管理者を務めさせていただいている、ウィキペディアは来月(2021年1月)16日に、20歳の誕生日を迎えることになる。新型コロナウイルス感染症の拡大状況にもよるが「Wikipedia 20 JAPAN」と題した誕生日パーティを開催する運びとなった。単純に誕生日を祝うだけではなく、これまでの取り組みやウィキペディアタウンなどを振り返る機会とするべく準備を進めている。

ウィキペディアには、「中立的な観点」という方針が存在する。ここでいう中立的とは、編集上の観点で、偏向なく記事を作成していこうというものである。そのためには、書籍・雑誌・新聞などさまざまな媒体を多く使用していくことが必要となる。そこには、図書館が必要不可欠であり、そこにいらっしゃる司書の活躍が大きく関わる。実際、ウィキペディアタウンでも司書が集めた資料群が記事に大きな役割を担うことは間違いない。

これまで、町のことをウィキペディアに書き留める取り組みとして、ウィキペディアタウンで講師をさせていただいたが、その経験には現在の図書館がなくてはならない存在のものであると認識している。ウィキペディアタウンに限ったものではないが、まちの記録と繋ぎ止める役割は、単なる伝承者だけではなく司書も担えるのだ、ということを感じさせていただいた機会であった。

そんな、ウィキペディアタウンが常に開けられるような、建物として存在しているだけでなく、はたまた本が並んでいるだけではない場所として存在してほしい。そして、人と人とがゆるやかに繋がり、コミュニケーションを取っていく中で形作られていく、人々の思いをくみ取れるつながりが創れる場所が「図書館(仮)」であってほしいと心から思っている。あえて2020年現在の枠組みを用いて例示するのであれば、公民館+図書館+(何か)が「図書館(仮)」となるのではないだろうか。

2020年12月30日
ウィキペディア日本語版 Araisyohei


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