変わっていくもの、変わらないもの|「図書館」(仮称)リ・デザイン Advent Calendar 2020

人の感情よりも、知識や知恵が救ってくれることってある。気持ちだけでは、解決できないこともある。
これはきっと時代がどう変わろうとも、伝えるツールが変わっていっても、国や価値観が変わろうとも、ずっと変わらない。

その叡知に触れられるもの。アカデミックな研究から市井のお役立ち情報まで、はたまたもてあました自己を深く掘り下げたり分析してみたり身体的なアプローチをしてみたり。いろんな手引きをしてくれる。

その集積が図書館、という存在なのかなあと私は思う。

だからその意義が伝えられれば、パッケージなんて変わっていってもかまわない。これまでの最適解が紙に印刷した文字を綴じた本、というかたちだっただけで、そんなの活版印刷が普及する前の時代は書写だったし、なんなら紙も普及する、発明する以前の昔々は石に彫ってたくらいだ。

それでも後世に伝わっていくし、そうやって人は叡知を伝えつないできた。

今こうやって言葉を紡いでいる私たちの身体は有限で、いつかは朽ちてしまう。死ななかった人はいない。でも言葉は残る、といいたいけれど、情報伝達や印刷技術が発展して個人が気軽に発信できるようになった現代、たとえば私の駄文なんて埋もれてどこにも届かないのかもしれない。

司書は資料を収集し、整理し、保存し、利用に供することがその存在意義だ。私自身は近年、図書整理業務に携わっている。そのままでは氾濫し埋もれて探せない資料に、書誌を作成することで道筋をつけ、目録を登録することで居場所を作る。アクセスしやすくなった資料を、利用してもらったりレファレンスで見つけてもらったりする。

そうやって図書館の資料は、あなたの手元に届く。
それは目の前の誰かだけではなく、未来の誰か、地域や国を跨いだ誰かかもしれない。
誰かの役に立ちますように。

整理した資料を送り出すとき、そんな祈りのような気持ちがある。

もしかしたらこの業務もいずれAI(人工知能)にとって変わられるものになるのかもしれないけれど。

2021年1月2日
Librarian/Cataloger   Ai Hakoda(箱田 愛)

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