いつも、あなたのそばに|「図書館」(仮称)リ・デザイン Advent Calendar 2020

図書館はあなたの身近にありますか?

今私は公共図書館で働いているが、これまでの自分の人生の中で公共図書館が身近にあった記憶は残念ながらない。図書館の記憶は学校図書館がほとんどで、それでもそこで過ごした時間は幸せな時間だったと思う。

小さい時から身近に本があり、本を読むことが好きだった。小説世界に入り込んでその世界を丸ごと感じ、ハラハラしたり、涙したり、笑ったりすることが今でも好きだ。

本が好きだったから、子どもの手が離れ、何か仕事をしようと思った時に、図書館を選んだ。図書館で働くなら司書資格があった方がいいと考え、勉強を始めた。

『図書館法』や “図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由を持つ国民に、資料と施設を提供することを、もっとも重要な任務とする。”という一文で始まる『図書館の自由に関する宣言』、『図書館員の倫理綱領』など司書資格を取るために学ぶ中で、図書館の理念について目を開かれる思いがした。本を貸し出すという行為の裏にこんな世界が広がっているなんて知らなかった。

公共図書館は赤ちゃんから高齢者まで誰にでも開かれている。誰でも無料で利用できる。利用している公共図書館に所蔵していない本でも、都道府県立図書館をはじめとする域内の図書館や国立国会図書館などとの相互貸借制度により、本を借りることができる。公共図書館の中で本や雑誌などを読むだけなら、市民でなくても旅行者であってもできる。好きなだけ居ていいし、冷暖房完備である。最近の図書館にはカフェが併設されていたりもする。

図書館ってこんなに素晴らしい施設だったんだ。

公共図書館で何年か働いてみて、理想と現実は違うことを知った。図書館サービスの基本は変わらないし、今でも素晴らしい施設だと思っている。司書として、図書館を利用する人々の役に立てるのを嬉しく思う。しかし、自治体の行財政改革により、図書館の予算は毎年減っていく。図書館の現場で働く職員は、非正規職員(現在は会計年度任用職員)ばかり。より良い図書館のために、先進事例を視察したりするが、それをそのまま真似出来るわけでもないし、するべきでもない。

私たちの図書館はどんな図書館を目指す?

この問いに対する答えをずっと探し続けている。「私たち」は利用者、自治体、図書館職員の区別なく、ひとりひとりにとっての「私たち」でなければ、図書館が無くなるのではないかという危機感も強くある。そして「私たち」の図書館はここを目指すという共通の未来があれば、その実現に向かって一緒に進んでいけるのではないかと思っている。

だから「図書館」(仮称)リ・デザイン会議を通してこれからも考え続けていきたい。
30年後の2050年に「図書館はあなたの身近にありますか?」と聞かれたら、「あります」と当たり前に答える社会になっていることを夢見て、、、。

2021年1月3日

公共図書館司書 細田恵子

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