図書館というナラティブを解体する|「図書館」(仮称)リ・デザイン Advent Calendar 2020

 図書館をリ・デザインするために「中の人」に求められるのは、自身の図書館についてのナラティブ(対象についての物語や解釈)から、いったん自由になる、ということから始めなければならないのだと、自分自身に引き付けて考えるならば思います。

 図書館というものを観念する人々の、多様にあるナラティブを想像すること。今ある「それ」を真摯に観察するとともに、今はまだない「それ」について、人々の思いを想像し、人々と共に創造していくこと。そうした精神活動を起こすためには、「たき火」を囲んで自分自身の図書館観をいったん「解体」すること。自分の価値の網を取っ払って、虚心坦懐に人々の声を聞き、そこから知的な喜びや精神の幸福についての考えや感じ方を手に取ってみること。

 そのとき、そこに求められているものが、今ある図書館とはかけ離れたものであっても、そして、そこに「図書館」という名称さえ登場しなかったとしても、その見えたものから目を逸らしてはいけない。

 私たちが知っている図書館という現象や営みが、何をしてきたか、そして、何をしなかったか、ということを紐解きながら、いまを生きる人々が、どんなことを考え、何を不明としながら日々を過ごしているのか。

 そこから、組み立てていく覚悟が、私については言えるのかな、と思います。

 そして、私の図書館についてのナラティブと、私以外の図書館のナラティブの溝を見つけること。そして、その溝の向こう側に、思い切って渡ってみること。さらには、再び自分の立ち位置に戻り、溝の向こうに向かって橋を架けてみること。

 2021年から始める、新しい行動様式としたいです。

2021年1月4日

嶋田学(不自由な図書館屋)

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