人が知りたいと思うとき|「図書館」(仮称)リ・デザイン Advent Calendar 2020

図書館で働き始めたころ,”辞典はどこ?“と駆け込んできた二人の男性。

目的のものを見つけたらしく,帰っていくときに声をかけて,どうしたのかとお聞きしたら,近くのファストフード店で話をしていた時に,二人は言い争いになったらしく,決着つけようと,図書館に行こうとなったとのこと。お互い白黒ついてよかったということですが,なにか知りたいと思ったときに,とっさに図書館で調べようとなったということに感動を覚えたことを思い出します。

ある夏休みの終わりころ,自由研究のため調べものをしようと図書館に来た兄弟。テーマがまだ決まっていない男の子と話していたら,博物館に行って見たものに関心があるらしいことはわかったので,図鑑をいくつか紹介。最初は面倒な様子だったその子は,急に眼が輝き(ように見えた),夢中に読み始めました。

何か探している様子の女性二人。ある人について調べているとのこと。人物事典の一つに写真付きで掲載されていることを確認し,お見せしたところ,涙を浮かべてご覧になっていました。事情をお聞きすると,敗戦の時に引き上げてきたが,ほとんど持ち帰ることができなかったものに,兄の写真があったそうです。当時の役職からすれば何かに記録されているだろうと考え,図書館に探しに来たということでした。ご家族にすれば遺影です。

直接対応したケースではありませんが、閉館間際に駆け込んできた女性は、○○を使った料理の本は探していたそうです。お店で生姜と間違えて○○を購入。当時は1冊くらいあったと思います。返品するとか、捨てるとかしないで、図書館で調べてみようと考えて来館したということです。翌日対応した先輩から話を聞いて、そういう人もいるんだと感心というか、感動もありました。

図書館でサービスする側にいる人にはここにあげたような経験を持っているのではないでしょうか。

人が知りたいと思う事柄はその人にとっては大事なこと。ググることでも得られる情報も増えてきていると思いながら、その時に図書館に行こう、使おうと考えるところに、人の行動の根源があると思います。

図書館の歴史,存在の意味は,情報が集積し,整理され,保存され,利用できる状態にあることと思います。

情報がどのようなパッケージに収まり、どのように伝わるようになるかには関わらず、人が知りたいと思ったときに応える場としての図書館は不変なのでは、と常々考えています。

これを書きながら、保存するということで、NHKみんなのうた「図書館ロケット」を思い出します(https://www.nhk.or.jp/minna/songs/MIN201310_02/)。

機会があれば見てください。“縦横無尽に時間と空間を飛び回り知識を広めていくという壮大でファンタジックな歌”(紹介から引用)です。

落ちがない話ですが、リ・デザインを考えながら紹介します。

2021年1月10日

調布市立図書館 小池信彦

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