情報と「わたし」の関わりをリデザインする。|「図書館」(仮称)リ・デザイン Advent Calendar 2020

 私は、図書館と市民社会をつなぐ、図書館を一緒に創造する市民社会を育てたいという思いで、図書館の中と外をつなぐ草の根的な取り組みを続けてきました。心は図書館にありますが、日々の仕事で出会う人たちと図書館について語ることはほぼありません。

図書館の価値の伝わらなさに日々打ちのめされたり(笑)しながらも、図書館と市民の間にいることに意味を感じて、図書館の外から図書館を見ています。

図書館ではないところで活動をしていると、図書館の価値を語れば語るほど、図書館が遠いものになってしまうことを感じています。

図書館の外の人にとっての「図書館」は自分の街の図書館や、自分が使う大学の図書館などある一つの図書館かもしれません。実際には、図書館同士はネットワークでつながり、インターネット上には多くのアーカイブがありますが、ほんの一部しか見えていないように思います。「図書館が地域社会の知のインフラなんだよ」とか、「図書館は民主主義の砦なんだよ~」とか「図書館はこんなこともあんなこともできるよ」という図書館を伝える営業トークをしていくと、「図書館のイメージが変わった」「今度行ってみよう」「今度アクセスしてみよう」と、言ってくれます。

じゃあ、来週、行ってみようかというふうにその方の行動までは変わることも、その人の生活世界の中に図書館が存在することはないかもしれません。図書館が語られないコミュニティで、図書館を語る経験を繰り返すうちに、「図書館はこんなこともできるよ!」と次々にメニューを示すことで何かが生まれているんだろうかと思うようになりました。

人々は、「情報=役に立つ・早い・新しい方がいい」と、消費社会の中で情報を捉えています。自分で探して、自分で考えるということは、「コスパが悪い」ことです。図書館で資料を探すことは、コスパが悪いという風に見えるかもしれません。図書館で資料を見つけたとしても、手に取ったものが全く見当違いのものであることもあるからです。

 私は、探すことそのものが目的、新しい知に出会う宝探しのように考えています。探していたものが見つからなくても、発見や楽しさがあります。外からの情報を取り込んで創造的に情報と関わるとはそのような態度、捉え方ではないでしょうか。溢れる情報の中で、情報に対して消費者的な関わりから創造的な関わりへと、リデザインすることが大切だと思います。

で、どうしたら、その枠組みが変わっていくのかと日々考え、様々なフィールドの人と実践してきました。抽象的なことを語るよりも具体的な小さな体験の積み重ねの果てに変わっていくものかもしれないと思います。

私の活動の中で、ウィキペディアを編集するイベントをすることがあります。参加者と一緒に資料を探すとき・・「図書館にはこんな資料があったんだーー!」「新聞のスクラップ資料見ているだけで楽しい・・」そんな声が聞かれます。

たくさんの資料を見ても、求めていたものは見つけられないこともあります。でも、目的外のところにある情報を見つける楽しさを知ることは、その人の中に新しいアンテナをつくり、次の「知る」の種となるかもしれません。

そして、その知の蓄積をつくるのは誰なのかと考える。
「わたし」もつくる人、その一部であると気づく・・。
そんな小さなスケールがわたしが取り組む場であると考えています。

2021年1月13日
東海ナレッジネット / にんげん図書館 山本茜

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