第2回会議:第2部セッション2 (2021年5月16日)

「図書館」(仮称)リ・デザイン会議では、第2回会議を2021年5月16日に開催いたしました。報告については「第1部」「第2部 セッション1」を“その1ページ”で、「第2部 セッション2」を本ページにて公開しています。

【ルーム1読書会『デジタル・アーカイブとは何か』

担当者:Sigure Uchita(L)、佐々木奈三江(大学)
参加人数:20名
参加者:MLA4名、大学1名、一般15名

内容:『デジタル・アーカイブとは何か–理論と実践』をテキストとして、デジタルアーカイブ/電子図書館という言葉の定義と概念に関する文章を読んだ。

目的:コロナ禍で広がった「電子図書館」と「知識情報基盤としての図書館」の差異を整理する。

  1. アーカイブとは
  2. 電子図書館とは
  3. コロナ禍と電子図書館
  4. 知識情報基盤としての図書館

アーカイブとは

はじめに『デジタル・アーカイブとは何か–理論と実践』(以下、本書という)において、デジタル・アーカイブという言葉が、用語上も概念上も十分に整理されていない社会状況であるが、少なくとも専門家・アーカイブ関係者の間では、ある程度の統一的見解が得られて来るように思われる(柳与志夫)と記述されている部分を読んだ。

次に、アーカイブという言葉には公的な記録という次元と集合的な無意識までも含んだ人間の無意識・振る舞い・語りといった層が息づいている(吉見俊哉,2017)とする見方、デジタルアーカイブ/電子リソースの暫定的な定義を、社会が遺すことを選択した・社会が遺すべき知識情報基盤としてのデジタルデータとそれにまつわる仕組みの総体(福島幸宏,2020)とする見方を紹介した。本書だけでなく、他の文献を参照したのは、デジタル・アーカイブという言葉をとりまく概念の変遷を示すためである。

電子図書館とは

本書は3部構成になっており、論考の執筆者やインタビュー・座談会の出席者は情報学・図書館学の研究者・実務者が多い。そのためデジタルアーカイブの実践例は図書館・博物館・美術館・文書館が関わるものとなっている。

例えば、札幌市中央図書館による電子図書館システムの構築・機能向上及びコンテンツの調達という実証実験、そこから展開される公共図書館としての役割は、デジタルアーカイブの条件(2部)として提示されている。

しかし読み進めていくと、電子図書館の構築とデジタルアーカイブの構築が並列に書かれていることに疑問が浮かび、そもそも電子図書館とは何か、と振り返りたくなった。

読書会では、「アーカイブとは」の次に「電子図書館とは」の章を立て、本書の長尾真インタビューを紹介した。「電子図書館とは単に本を電子化して電子の書籍に並べるということではなく、情報が有機的に結合・リンクして、人間の頭の中における知識の構造に似たような形で提供される、というもの」であるという部分を読んだ後、「電子図書館Ariadneの開発(1)」論文の抜粋と、『電子図書館 新装版』の抜粋を読んだ。

電子図書館の定義と概念を確認するためである。

コロナ禍と電子図書館

電子図書館の発展過程には二つのステージがあるという(長尾真,2010)。2021年コロナ禍の現在、電子図書館(電子書籍貸出サービス)の公共図書館への導入が進んでいるが、ここで用いられている「電子図書館」とは何か。

新聞の社説を参照し、電子図書館の発展過程ではどのステージに該当するか私見を述べた。

知識情報基盤としての図書館 I

そして、電子図書館という言葉と同様に、そもそもデジタルアーカイブという言葉が何を指していたのかを振り返るため、本書の以下の部分(影山幸一)を読んだ。

日本発の和製英語である“デジタルアーカイブ(Digital  Archives)” という言葉は、紀元前300年頃エジプトにあった世界最大のアレクサンドリア図書館の再生計画を背景に、東京大学工学部教授(当時)の月尾嘉男氏が発案し、1994年12月には「世界の文化を未来に継承するデジタルアーカイブ国際会議」(主催:(財)マルチメディアソフト振興協会・日本経済新聞)を開催。1996年4月に設立されたデジタルアーカイブ推進協議会(JDAA:JAPAN Digital Archives  Association)の季刊広報誌「デジタルアーカイブ」(1997〜2005)により伝播して行った。

(略)デジタルアーカイブには、独立型のスタンドアロンのデータベースや非公開のデジタルコンテンツもあり、デジタルアーカイブ=インターネットでは必ずしもない。

さらに、次の部分を読み、言葉を用語上概念上整理せず放置したまま流通させることで生じる歪みを示した。

“アーカイブ”について会話する場合双方が、話の文脈からそれぞれ好都合に自分に適した意味に置き換え、話を推測して会話を続けることもあるため、話者と聞き手、報告者と聴衆の間で“アーカイブ”に対する認識が一致しないまま議論が進んで行く問題が生まれている。

この「アーカイブ」という言葉への指摘は、そのまま「電子図書館」という言葉にもあてはまる。

2021年現在つかわれている電子図書館は、電子書籍貸出サービスであって、「電子図書館」(長尾真,2010)ではない。

そして、デジタル・アーカイブという言葉についても「アーカイブ」という言葉と同様に、「認識が一致しないまま議論が進んで行く」。

知識情報基盤としての図書館 II

本書が出版された当時、想定されていた未来の一つに「知識循環型社会」(吉見俊哉,2015)がある。

読書会では本書の以下の文章を読み、2021年現在の状況との比較を試みた。

(略)2015年には「デジタルアーカイブ振興法(仮称)」の制定を目指す動きがある。2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会と並行して、日本の文化芸術を、デジタルアーカイブによって世界の人々へ向け情報発信する好機としたい。

(略)デジタルアーカイブの問題は、2001年以来続いている“人材、予算、著作権”である。デジタルアーカイブに実際取り組んでいるMLA、大学、企業などの現場では、さらに具体的な個別の課題を抱え、情報に関与する担当者は問題解決策も見出せず孤独に悩んでいるのが実状であろう。

(略)ボーンデジタルが日常的となり、水素社会が現実味を帯びてきた今日、日本の未来へ備えた情報国家の基盤作りとなるデジタルアーカイブ。本格的に着手する時期を迎えている。

(略)筆者は国立デジタルアーカイブセンター(以下、DAC:National  Digital Archives Center)の創設を提案したい。

(略)DACでは、人を中心とした4つの事業を展開する。ひとつめの事業は、日本の文化芸術情報を発信する【ジャパンサーチ事業】である。インターネットに、日本の文化芸術を鑑賞することのできる「ジャパンサーチ」を新規に開設。日本の独自性を醸成する日本の文化芸術ポータルサイトである。

(略)またDACではデジタル社会で人々が孤独にならないように、社会環境整備【地域情報ネットワーク事業】を行っていく。デジタル・デバイド(digital divide 情報技術格差)の問題解決へ向けた取り組みである。

(略)10年、100年、500年先を見越して、今、何をデジタルアーカイブにしておけば未来に役立つか(略)現段階では(略)公共性の高い情報が端緒となる。対象として忘れてはならないものはプアコンテンツ、いわゆる無価値情報である。一般市民の作品や何気ないつぶやきも、著名な作家の名作といったリッチコンテンツと同様に時代の証言であり、思いもよらない発想を与えてくれる。また、収集対象として盲点となるのが、近過去の近代資料である。

この文章中で実現された事業は、ジャパンサーチである。ここで読書会の協力者に、大学附属図書館におけるデジタルアーカイブへの取り組みについてお話を伺った。すると、参加者からチャットと音声でコメントが寄せられた。以下は、コメントへの応答も含んだデジタルアーカイブへの取り組み報告と展望である。

徳島大学附属図書館では、徳島藩大名である蜂須賀家由来の古地図を所蔵しており、かなり早い段階(1997年)から、高精細デジタルアーカイブを作成してきた。これらは、学内の教員との連携のもと、研究にも資するレベルのコンテンツとして作成されてきたが、十分に活用されているとは言い難い。資料が電子化されインターネットで公開されれば利用が進むかと言うと必ずしもそうではなく、わかりやすく検索出来て、有用な資料が得られるプラットフォームの存在が必要である。当館では、デジタルアーカイブの視認性を高めることを目的として、「ジャパンサーチ」との連携を進めることとなった。ジャパンサーチでは、メタデータのオープン化が必須となっており、IIIFでの公開も可能となることから、この機会にデータのオープン化を促進したい、とも考えている。

 ジャパンサーチとの連携を考えるにあたって課題となるのは、制度、費用、人材だと考える。これまでの利用規定でオープン利用が認められていないなら、まずはオープン利用の意義について組織内で合意し、その上で規則改正や運用方法の見直しをすることになるだろう。また、デジタルアーカイブ作成には多額な費用がかかるため、どのように予算を確保するかも考える必要がある。さらに、資料内容がわかるようなメタデータの作成や、IIIFなどの活用、デジタルデータの魅せ方など、これまでの図書館業務の知識だけでは対応が難しい作業があり、新たな人材育成が必要となる。

図書館が保有するデータを、より多くの方に届けて、よりスムーズに、広く使っていただくこと。それはオープンサイエンス、シチズンサイエンスにつながる。デジタルアーカイブの作成・活用はそれらを発展させる力となるだろう。(佐々木奈三江)

なお、徳島大学附属図書館貴重資料高精細デジタルアーカイブには英文が付記されている。これは江上敏哲『本棚の中のニッポン 海外の日本図書館と日本研究』笠間書院2012年に触発された、アーカイブを世界に発信するための試みである。

また、参加者から寄せられたコメントの中には『デジタル・アーカイブとは何か』各論考に対応する問いかけもあった。

  • (柳与志夫)「アーカイブ」や「書籍」は仕組みやブツなのか
  • (長尾真)「読書」とはどういうことをイメージされているか
  • (淺野隆夫)「デジタルになり検索・発信」できれば活用されるのか

さらに、本書所収の若手座談会「実践するデジタル・アーカイブ」出席者からは、次の提案もなされた。

図書館の「収集・保存」と「提供・利用」の分離

  1. 資料属性に応じた図書館側からの具体的かつ細分化された「要請」の必要性
  2. 「収集・保存」と「提供・利用」の明確な切り分け

上記に共通する課題は、資料にまつわる利害相反や対立を「いったん棚上げして」+「図書館機能の本来的な部分を明らかにしていく」ことではないか。(花田一郎)

おわりに、本書ではアーカイブを構築するために必要な人材としてキュレーターを上げている(北本朝展ほか)。北本はキュレーションという言葉を「ミュージアムにおける展示企画に近い意味」で用い、デジタル・キュレーターは自身がデジタル・アーカイブのヘビーユーザとなって、デジタル・アーカイブの機能を最大限に活用しながら展示利用するコンテンツを収集する作業が必要となってくると述べている。

この指摘は重要であるが、2015年より前にキュレーションの必要性を示唆していた文章があるので、以下に引用する。

…アーカイヴには二重の伝達、あるいはそのこころみが生じていく。まずひとつはそこに封じられた物質が、かつてその場において帯びていた「ものごとを伝える、その仕方」をふたたび伝えようとこころみることだろう。けれどももうひとつはいまここに封じたものを、封じられたかたちのままにあらたに伝えていくその展示と伝達の形式、そしてみずからの読解そのものを模索することではないか。(二木麻里,2000)

テキスト:『デジタル・アーカイブとは何か−理論と実践』勉誠出版2015年

引用文献


【ルーム2】トークセッション 「司書になりたい人」~訊いてみよう!司書のこと、これからのこと~

担当者:高原、盛野、松岡
参加人数:27名
参加者:公共10名、学校3名、一般10名
話したこと:司書になりたい希望4名

自己紹介

司書になりたい人が身近におり、その人の疑問に『「図書館」(仮称)リ・デザイン会議』のメンバーなら答えられるのでは、と考えたのがこのルーム作成のきっかけ。担当者のそれぞれの司書になりたいと考えたきっかけや、どうやって司書資格を取得したのか等を質問者から投げかけしてインタビュー形式で回答していく。

大学で司書資格を取得できない場合の取得方法は?

→司書講習を受講する、通信制大学で受講する、司書養成課程科目開講大学に編入する。大学通学しながら受講することもできる場合がある。

大学で司書資格をとらない利点

→司書養成課程科目開講大学では、図書館のことしか勉強しない。様々な知識が司書になってから役立つため、廻り道もよいのでは。参加者の方でも社会に出てから司書資格を通信制大学などで取って実際に図書館で働いてらっしゃる方が何人もおられました。

経済的にはどうか。

→司書講習の受講が意外と安価。運転免許を取得するよりは安価。

司書資格は必須のものか?

→必須のものだと思い込んで資格取得した人は多いのでは。必須ではないとされていもあった方がよいと思う。高等学校司書では必須の場合もあるので、働きたい場所はどうか調べてみて。

図書館司書は力仕事か?

→大阪市立は本務職員のみで運営していた時は力仕事が多かったが、業務委託となり力仕事が減少した。雇用形態や自治体によってかなり異なるのでは。時代によって働き方はどんどん変わっていくと思う。また、図書館の人はよく本を読んでいると言われるが、実際には読む時間などない。学生のうちにどんどん読んでいた方がよい。

採用試験を受け働き始めた時に、司書の現場はどうなっているのか、不安を抱えながら勉強している。

→入庁してから研修期間があるため、そんなに不安を覚えなくても大丈夫。

インターン等を行っている図書館はあるのか。

→行っている図書館はあるが、大学等から申し出があり受け入れしている。そのため、個人で申し出があっても受け入れられないところもあるのでは。大学や教員のネットワークでインターンを行っているようなので、大学を選択する際に目安にするとよいかも。

インターン以外に職場としての図書館を知るにはどうすればよいか。

→実際にレファレンスしてみる。きちんと分かりやすく対応してくれるか。「この関係の本はどこにありますか」というライトなものでも。それだけで労働環境は推察できる

レファレンス回答の目安時間等はあるのか。

→大阪市は30分が目安の時間。利用者の時間を奪わないようにするために目安があるところが多いと思う。

図書館の就活はどうか

→最近は以前に比べれば採用が多い。ぜひ正規の職を狙って。一度別の業界、例えば公共図書館では遅れをとっているIT業界で働いて技術を身につけてから学んでから司書になるというのもありでは。

感想

  • 職業としての司書とは?職場としての図書館って?って事を働きたい人、働いている人を含め関係する人たちから知りたいって所からスタートした企画でしたが興味深く聞いてました。これからの事と期待することまで話を進められなかったのは反省点です。今後機会が許すならその辺りを。
  • 自分が話す側で参加するのは初めてでした。話す側として勉強になっただけではなく、若い世代に望んでいることを知ることができたり、自分のキャリアも考える機会になりました。学生の時は思ったよりも司書からの情報は手に入らず不安だった記憶があるため、またこのような機会はあったら参加したいなと思います。
  • かなり記憶を掘り起こして、そして今の話を周囲に聞きながらお話させていただきました。司書という仕事に興味を持っていただけるのはありがたいです。とても変化が大きい仕事なので、良くも悪くも参考にしていただければと思います。
  • 様々な方から、貴重なお話を聞かせていただくことができて、とても良い経験になりました。飾らない現場の声が聞けたことが、とてもありがたかったです。

【ルーム3】図書館員にとってのオープンデータを考える

担当者:子安、外丸、相宗、桂、坂ノ下
参加人数:49名
参加者:公共 > 学校 > 一般(本屋、行政)

話したこと:以下の4名からオープンデータに関する取り組み、狙い、反響、成果を共有頂いた。

  • 子安さん:千葉の民話、千葉県報目録、図書館年表、saveMLAK
  • 外丸さん:大阪市立図書館のオープンデータ(デジタルアーカイブなど)
  • 相宗さん:思い出のこしプロジェクト、公衆送信権の課題からオープンデータ化
  • 桂さん:司書課程の学生の取り組み紹介、Wikipedia、OpenStreetMap、大阪市デジタルアーカイブ活用

感想(担当者)

  • 坂ノ下:思ったより参加者が多く、オープンデータに興味を持つ方が多いと実感しました。改めて、図書館の取り組みとオープンデータは親和性が高いと感じると共に、地域のローカル情報を記録・活用する手段としてのオープンデータに可能性を感じました。
  • 外丸:たくさんの方に参加いただき、コメント・質問もいただいて貴重な機会でした。限られた時間では理解・議論を深めることが難しいので、引き続きこのような場を設けてディスカッションできればと思います。ありがとうございました。
  • 子安:よちよち歩きのオープンデータとの関わりを聞いていただき、ありがとうございました。できるものをどんどんオープンにしていきたいです。まずは県報を終わらせて…。
  • 相宗:オープンデータの取り組み事例をお話しさせていただきました。時間オーバーしてしまい申し訳ありません…今回の参加で感じたことが二点あります。
    • 一点目は何かに取り組む時、それをオープンデータとして公開するかどうかは企画段階で決めておいた方がいい(あらかじめCC-BYで公開することを前提に企画を進めるとか)ということ。
    • 二点目は、いまのところ、「オープンデータを公開すること(したこと)」に注目されがちだけど、オープンデータのよいとこは「誰かが公開したものを、別の誰かが別の形にして、時には別の文脈や意味づけをして、さらにそれを公開する」サイクルが作りやすいモデルなので、その辺りに目を配りたいなと思ったこと…です。あとは終わってからの飲み会で言いましたけど、「昨日食べた晩飯」でもなんでもデータにしていくといいと思います。メタデータとかをどう考えるかのいい練習になると思います。
  • 桂:大学の司書課程で司書養成をする立場から「オープンデータ的素養のある図書館員を輩出するために司書課程で試行中の教育実践」を報告しました。
    昨今の動きを見ても、これからの司書(ライブラリアン)を目指すなら、早くからオープンデータに触れ、データをオープンにする経験を積んでおくことは必須だと実感します。司書課程でオープンデータ化した成果もうまく発信できればなとも。
    学生が執筆した京都東山のローカル記事(Wikipedia/OpenStreetMap)のリンクを載せておきます。報告しながら「これは東山以外では伝わらないよな…」と焦りましたが、地元しか通じないローカルすぎる情報にこそ、面白さ&共有価値があります。

女坂」「幽霊子育飴」「六道珍皇寺
金剛寺(京都市東山区五軒町)」「三嶋神社(京都市)

感想

  • オープンデータの分科会に参加させていただきました。小学校2年で「町たんけん」、小学校3年で「昔しらべ」に該当する単元があると思います。専任の司書がいない自治体は難しいかもしれませんが、公共図書館などで公開しているオープンデータを、相互の図書館で活かすことができたら素敵だなと思いました。
  • 図書館論千本ノック、オープンデータの各ルームに参加しました。紹介された図書、事例どれも勉強になりました。職場では研究データのオープン化が主流ですが、いろいろなオープンデータへの視点も忘れずにいようと思います。
  • 普段は書店、本屋の関わりが多いのですが、図書館の話もとても新鮮で大変勉強になりました。オープンデータの整備、saveMLAK大変なお仕事かと思いますがとても素晴らしい活動を聞けました。
  • 大阪市の事例を拝見していると、かなりいろいろなデータがオープンになるんだなあと思いました。
  • 昔は目録にしていたようなものをオープンデータにできたら、と思うのですが、マップはわかりやすい気がします

参考URL 

【ルーム4】学校図書館で元気になる

担当者:松田、石井、高倉、林
参加人数:60名
参加者:学校司書、研究者、大学生、スクールーソーシャルワーカー

話したこと:「図書館の機能がカラフルになる方法としてのカフェ」について神奈川県立田名高校図書館での取り組みを学校司書の松田さんとカフェマスターを務める石井さん(若者支援のNPO代表)がトーク形式で紹介、参加者とディスカッションした。

図書館カフェの風景(松田)

田奈高校の図書館は、毎週木曜日の昼休みと放課後にカフェが開かれている。座席は40人分ほどだがカフェの時の来館者は平均で100人を超える。カフェの時だけピクニックシートを敷いて寝そべったり、床座りしたり。

机席ではボードゲーム。詳しいボランティアに教えてもらいって買いそろえた。図書館の机は卓球台にちょうどいい。楽器も普通にある。鍵盤など家では触れない生徒はここで弾く。ボランティアのミュージシャンの伴奏をつき。

交流相談(石井)

いろんな困りごとを抱えている生徒も多い。相談室もあるが、困りごとを言葉にし、予約が必要。相当ハードルが高い。虐待など異常なことも日常化すれば、それを異常とは感じない。カフェでお前それはちょっとおかしいよということを伝えながら、潜在的な課題を顕在化させていく、顕在化したものを相談室につなげていく。相談員の二人はカフェのスタッフ。生徒が相談室に入ってきたときにはもう相談員との関係性ができている。

文化的シャワー(松田、石井)

もともと図書館って文化的シャワーが降り注ぐ場所、カフェによって、食べ物とか、飲み物とか、音楽とかも大手を振って文化的シャワーに加わることになった。

いろんなところから浴衣を借りて、浴衣パーティが毎年夏の定番になった。大勢のスタイリストや着付けの先生も手伝ってくれて、大シャワーに。

若者支援は若者の社会的孤立を予防する支援。文化のフックがついていないと孤立する。生のイチゴをジュースで飲んだ子には、イチゴのフックが、浴衣を着れば浴衣のフックがつく。あってもなくてもいいものは、なくてもいいものにされる。食事ではフルーツジュース、衣服でいえば浴衣。カフェで文化的シャワーを浴びて、三年間でいろんなフックが身体中につけば、社会に出てからそのフックがいろんな人に引っかかるようになる。

社会的関係性(松田、石井)

図書館カフェって何よりも社会的関係性が得られる場。ぴっかりカフェでは述べボランティア数が年間200人を超える。生徒の大きな課題の塊の中には、教職員の専門性だけでは解決できない課題、学校の三年間で解決しない問題のほうが多い。卒業後のために、ここで助走をやっている。

ゲーム司書の高倉さんと

高倉)図書館でゲームをするということだけでもハードルが結構あった。カフェの中では様々なことをやる一つひとつきちんと説明してクリアするのは大変だったと思う。

石井)進路未決定者が毎年70人もいて、学校の力だけでは対応しきれない。そこでキャリア支援室の室長の先生が私のいる支援機関に協力を依頼してきた。学校で相談の際に、図書館をフィールドにさせてくださいと言って、松田さんがOKしてくれた。

松田)管理職とかキャリア支援室の室長と一緒になって、戦略を練って、図書館での飲食などを職員会議で一般の教員に説明して、納得してもらって進めていく、そういう学校だった。学校図書館側がひらかれていればなんでもできる状況だった。

高倉)カフェで使われているゲームが、「コヨーテ」「そっとおやすみ」と「ナンジャモンジャ」。ボランティアに詳しい方がいて、そういう方々の力を借りながら成り立っていることがわかる。

石井)ゲームをやると、学業では今一つの生徒が心理的なゲームでものすごく強かったりする。アセスメントツールとしてゲームはものすごく有効だと思っている。

Q)チャットには全国の人から、すごいなという声が寄せられている。全国に広がってほしい。

⇒図書館を居場所にするというカフェ的なものは、北海道から沖縄まで日本全国で60校ぐらいある。神奈川には12校。NPOパノラマで司書や学校の先生にOJTも取り入れて運営を学んでもらう講座を始めようとしている。

Q)ぴっかり図書館っていい名前。何かやろうとするときにそれを名前で示すというのは大事だ。

⇒新羽高校の図書館も、飛ぶ図書館と呼んでいる。

Q)課題の解決を図書館に期待していない普通の高校で、飛ぶ図書館をどのように実現するのか。

⇒まず、図書館の認知度を高めることから始めている。来館者や貸出しが増えて、成果も出ている。

Q)私の勤務する学校は中高一貫校のすごい進学校。読書習慣もついていて、図書館を利用する生徒も多い。教員側も中高の図書館というよりも研究できる図書館がいいというようなイメージが強い。居場所のような図書館づくりを進めたいが、何から始めていいかわからない。一日に100冊もの貸し出しがあって、それを司書2人で回して、昼休みも貸出し返却しているだけで精一杯でほとんど生徒と話せないという状況だ。

⇒松田)大学図書館のようなものを目指している先生には、「大学だって今は、ラーニングコモンズが最先端、対話的な学習をするために学習指導要領に沿った場所を作りたいんです。」って。

石井)私が学校で最初に心がけたのは暇そうにしていること。生徒たちは暇そうな大人を見ると話しかけてくるもの。

Q)多様な学びの場、居場所にも学校のカラーがある。数学オリンピックに出たりするような生徒は多い学校では、相対性理論について語る会や源氏物語をもとに恋愛偏差値を上げるコツを伝授する催しが居場所につながった。カラーに即して相応しい居場所づくりが必要だと思うが、そのためには何が大事か、教員の養成の段階で学校図書館について学ばせるべきなのか、学校司書の養成の仕組みの構築し、学校司書を配置することなのか。

⇒松田)両方が必要だ。神奈川の場合は学校に、専門の司書が常勤で必ずいる。150人もいれば学校司書の研修を自分たちで作ることもできる。小さい自治体では難しい。そういうことを考えたらやはり学校教育という中で学校図書館の理解を高めていくしかない。教職課程で必修にしてほしいと思う。

Q)田奈高校のように学校側にもともと理解があって、外部を巻き込んでNPOの人たちと一緒にやろうなんてそもそも考えられないところがほとんど。自分たちで全部抱えこもうとする。

⇒松田)今年から新羽高校にもSSWが常駐するようになった。県としてそのように動いている。10年前に比べたらずっと外部の人が入りやすくなってきている。

Q)公共図書館と違って学校図書館はスペースも限られている。ゾーニングが難しい。

⇒松田)授業で使える空間とわちゃわちゃした空間を必ずレイアウトするというのが基本だ。そのうえで時間で分けるしかないと思う。

⇒石井)図書館がいいのは、書棚があるので、見えない部分が必ずあること。ヤンチャ系、オタク系の子たちは、周囲や先生から目の届かないところにいたい。そこは安心安全だと図書館が保証しておく。

Q)ぴっかりカフェへの批判にはどのようなものがあったのか。

⇒石井)ほかの高校でやろうとするときに先生から必ず出てくるのはこれ以上さぼり場を増やしてどうするんだ、授業に行かなくなる生徒が出たらどうするんだ、という批判。ただ、運営方針がきちんとできていれば、さぼり場にはならない、いいユースワークが展開できる場になる。

感想・まとめ

石井)若者たちの居場所支援をずっとやってきて、図書館は学校の中の居場所的な空間だと感じている。ある程度の大きさと視界を遮断するようなゾーンがあることによってジャングル化していって、肉食動物から草食動物、昆虫系の子供たちまでいられる場所をつくっていける。読書はカモフラージュで本当は人と話したいという生徒も居られる。図書館にユースワークが一人いればいろんなことができるそういうこともお伝えしたいと思う。

松田)相対性理論の話をするのもそうだし、難しい話がしたかったらしてもいいし、自分の話したいことを話す場所であることを目指すことが必要であると思う。かつての高校の卒業生が、お互いに干渉はしないけれど存在は認識している複数のグループが入り混じって仲良くはなくても排除はしない場所、というふうに図書館を振り返っていた。利用者の多様性をどう作るかを考えて図書館を作っていかなければならない。利用者が多様になればメディアも多様になるし、利用方法も多様になる。スパイラルで上昇していくようなイメージをみんなに持っていただきながら多様性を目指すということを常にやっていってほしいかなと思う。そうしたときにはじめて自分の場所にもなる。

感想(チャットから):

  • 学校図書館は「一人で」「静かに」「本を読む・借りる」場からそれこそ「リ・デザイン」していくということですね。
  • 学校内に学校じゃない場所があるというのはすごく魅力的です。
  • うちも進学校の図書館ですが、貸出の時に司書の方から一言余計に声をかけるようにしていますよ。そうしたら、話したい子は声をかけてくるようになってきています。
  • 居場所としての図書館、切実に作りたいのですが、小学校司書は週2の勤務、いない間は図書委員の貸出のみなので…先生方を巻き込むのなかなか難しいです。
  • SSWです。司書さんと一緒に居場所カフェを作りたいと思っています。
  • 「読書会、研究会、観賞会、映写会、展示会」をすることです。これは学校図書館法でやるように定められています。

第2部セッション2報告は、以上です。
第1部、第2部セッション1は、以下のリンクからお読みください。