「図書館」(仮称)リ・デザイン提言 第0版の公開について

この度、「図書館」(仮称)リ・デザイン会議では“「図書館」(仮称)リ・デザイン提言 第0版”を公開する運びとなりました。

下記、「はじめに」「提言」「ウィッシュリスト(仮)」をCC BY-SA ライセンスにて公開します。

はじめに

「図書館」(仮称)リ・デザイン会議は、「図書館」の位置づけを再定義・再定置することを目的として有志が集まり、2020年に発足しました。
この会議は、図書館に関心があるみなさんに誰にでも開放されています。会議の名称を「「図書館」(仮称)」としているのは、図書館という言葉で想起される枠組み・意味の垣根を外し自由に時代にあったその未来像を語ろうという意思を表しています。

2020年から流行した新型コロナウイルス感染症により、私たちの生活は様々な制限を課され、図書館の利用も休止や制限を余儀なくされました。それがこの会議の発足の契機となりましたが、コロナはきっかけに過ぎません。
社会の安定と発展への希望を断ち切るような、文化の破壊、紛争、自然災害などが相次ぎ、生死のあり方とリアルに向き合わざるを得ない状況であるいまこそ「思考し行動する」にふさわしい時期であろうと考えています。

私たちは目標として「2050年を見据えた(図書館にかかるすべての人にとっての)ビジョン」を策定しようとしています。
いまから約30年先にある2050年は、図書館というものの形と意味を規定した図書館法の施行から100周年にあたります。
図書館は後世の知的生活に大きな責任をもつ機関です。2050年にいまを振り返ったときに、30年前が大転換点であったと言えるよう熟議をし、行動していきます。

この時点で私たちが考える「図書館」(仮称)について提言します。

提言

私たちは「図書館」がすべての人にとって生きるためのしなやかさを育む機関であると考えています。

この会議では、2022年の現在の状況を踏まえ、さらにこれからのテクノロジーの発展を予想しながら、未来の「図書館」(仮称)が(提供するものの何たるか)果たす役割を提案しようとしています。

私たちの考える「図書館」(仮称)がもつ機能は、誰もが情報を活用でき、選択肢のある社会を実現させる役割を担うことです。
私たちの社会には、実際に多様な文化や様々な視点があります。それらをアーカイブすると同時に、すべての人に開き、さらに学びと選択肢の伸展に役立てていく必要があります。

「誰もが情報を活用する社会」を私たちは次のように考えます。

  • 誰もが平等(公平)に情報を得ることができる
  • 得た情報を活用したいと思ったときに活用できる
  • 情報を共有し、深めることができる場がある

それは、本を手渡すだけでなく、その先にあることも大事にするということです。
一人ひとりの可能性を育み、選択肢を広げるということが誰もが生きやすい社会につながると考えています。

そして、その社会実現のために重要なのは、人です。
そのためには、ひとりひとりが読解力を高め、情報を見きわめ活用できるスキルを身につけることが必要です。
つまりは、誰もが情報リテラシー、情報活用能力を持ち、情報をフラットに使える社会を作るために、「図書館」(仮称)は存在します。

この提言に対する最適解に私たちの会議が簡単にたどりつけるとは思っていません。
考えつづけ、試しつづけ、失敗しつづけるプロセスを経て、時代のニーズに応えられる「図書館」(仮称)となっていくでしょう。

これからのアクションについて、私たちと一緒に考えませんか。
「図書館」(仮称)リ・デザイン会議では、皆さんのご参加をお待ちしています。

ウィッシュリスト(仮)

2050年の情報・資料を取り巻く環境はおそらく私たちの想像を超えたものだと思います。一方、その時代の「図書館」(仮称)は、私たちの仕事の現在形から切り離された唐突なものではなかろうとも考えています。

未来の「図書館」(仮称)像を考えるにあたり、私たちは「ウィッシュリスト」を作成しました。これは、「図書館」(仮称)をどのような方向に発展したいか、させたいか、という対話から生まれたものです。

立場により見えるものは違うでしょう。あなたのウィッシュはこの中にあるでしょうか。ほかにどんなウィッシュを持っていますか?

◇「図書館」(仮称)の共通認識をめぐるウィッシュ

  • 図書館は、あらゆる人が存在できる場所です
  • 図書館は、感情や考えを表す「ことば」を獲得する、そして他者と対話する場所です
  • 図書館は、複数の選択肢をもつために、さまざまな視点の情報を知ることができる場所です
  • すべての図書館は普遍的機能として「知る権利を保障」します
  • 図書館は、ネットワークを構築します

◇「図書館」(仮称)の果たす役割にかかるウィッシュ

  • 今と昔が繋げることができる─つなげたい
  • 未来と今を繋げることができる─つなげたい
  • 図書館では、主体的で対話的な学びができる──したい
  • 図書館は知識を情報に繋げてゆける──つなげたい
  • 図書館からはインスピレーションが得られる──得たい
  • コミュニティの場を再生もすれば創造もする──創りたい
  • 人と人が出会い、人と「何か」が出会い、そして繋がる場として機能する──したい
    いわゆる「コミュニティ」と「ファミリー」、またその中間に位置づけられるさまざまな「絆」や「縁」…たとえばシェアハウスの住人のような。血縁重視の家族ほどではないが、地域コミュニティというほど離れていない。血縁ではないけれど、いっしょにご飯を食べているコミュニティ。

◇情報・資料にかかるウィッシュ​

  • 図書館とはストレージです。
  • デジタルアーカイブを構築・活用する、しうるのも図書館です。
  • オープンデータを保存・作成・活用するのも図書館です。
  • 自治体がもつオープンデータと連携するのも図書館です。
  • 情報を集め整理する基盤となるのが図書館です。
  • いつでもどこでも情報にアクセスできる拠点になりうるのが図書館です。
  • デジタル形式で資料を保存・継承してゆくのが図書館です。
  • 情報知識を再生産の場が図書館です:データが活用されることを意識しながらストレージ機能を維持しています。
  • 利用者が情報資源を組織化する場が図書館です。:●●●●
  • デジタル資源を情報組織化する場が図書館です。
  • 「翻刻」の仕事場となるのが図書館です。
  • 情報にタグをつける場は図書館です。
  • 情報にアクセスしやすくする鍵を握るのが図書館です。
  • 市民による情報の利活用を支援するのも図書館です。:ウィキペディアタウン、マッピング・パーティ、オープンデータソン、自治体オープンデータを使ったアプリづくり etc.
  • 自治体・民間オープンデータを活用しビジネスを発展させる可能性を持つ、それも図書館です
  • GitHub的機能を持つのも図書館です
  • 圏域の市町村の情報を一つにまとめることができる、その情報を発信できるのも図書館です
  • ジャパンサーチとの連携しながらも、バックアップとしての紙の本の保存をするのが図書館です
  • データベースの活用、電子書籍の活用を拡げる場が図書館です

◇「ひと」を伸ばしたいというウィッシュ

  • 「拡大情報リテラシー」を身につける:本だけでなく多様な情報に自由にアクセスするようになる、情報を吟味する力を持つ
  • 創造性、想像力を伸ばす:0を1にする
  • 「組織」の力を高める
  • コミュニケーションとエデュケーションを大事にする
  • 主体的・対話的な学びを支援します
  • おせっかいとおっちょこちょいを発揮する
  • 利用者も図書館員になる/図書館員も利用者になる
  • インタビュアーになる/インタビュイーになります
  • 動機・好奇心の源を持つ
  • 場のファシリテーターとなる
  • 情報をどう「図書館」(仮称)に取り込んでいくか、マネジメントしていく
  • 利用者と「図書館」(仮称)を繋ぐ役割を果たす

◇つながりをめぐるウィッシュ

  • 情報と人のハブになります(情報と人のハブ)
  • 再現可能性(記憶・記録の)を担保する
  • 図書館業務を標準化する
  • 自分の町を調べる集まりづくり
  • コンテンツとしての図書館総合展(司書等が繋がりを作り交流する場)
  • レクリエーションとしてのゲーム
  • 資料をつなぐゲーム
  • 文書館的な機能を持つ
  • 議会図書室と連携し、資料提供機能・レファレンス機能を発揮する

◇場をめぐるウィッシュ

  • 公民館を見習いたい、公民館になりたい:実践するところ、体験するところ
  • 利用者が情報を発信できる場になりたい、インプットだけでなくアウトプットできるところ
  • 対話する場になりたい:情報を自ら作っていく・共に作っていくところ
  • より「公共性」を感じられる場でありたい:自分が社会の中にいる・安心していることができる
  • いるだけでもいい場所になりたい:物理的に必要

おわりに

今回の提言に伴い、「図書館」(仮称)リ・デザイン会議では“「図書館」(仮)リ・デザイン会議’22夏”を開催する運びとなりました。
詳しくは以下お知らせページをご覧ください。