「30年後の図書館」のことをこどもたちと話してみた|「図書館」(仮称)リ・デザイン Advent Calendar 2020

30年後の図書館のことを考えると、私は定年退職してるだろうし、30年後の社会がどういう情勢かもわからないので、なかなかイメージがわかない。

けれども、今10代のこどもたちはすっかり大人になって、おそらく図書館等の公共施設をばりばり活用している時期のはず。

年末だし、未来を語るのかもいいかな、と思ったので、我が家のこどもたちと「30年後の図書館」をテーマに話をしてみた。

 まず「今の図書館」のイメージを聞いてみる。

「図書館は本がたくさんあって気軽に本が読める、本を使って調べものができる場所。図書館の人は図書館の本をもっと読んでほしいと思ってイベントとかを開催している人。」

「本が無料で読める場所。」

うんうん、そうだね、とうなずく。

じゃあ次に「図書館でこんなことができたらいいな」と思うことがあるか聞いてみる。

「自分の本や電子書籍とかで読めない状況になった時、気軽に無料で本が読める環境を維持してほしい。特に無料が大事。」

「個室があるといい。にぎやかにできる場所と個室があって、自分の気分で場所を選んで本を読めるといい。」

 今の図書館とあんまり変わらないんじゃないかな、と思って「それだと今のままでもいいってこと?」と聞いてみる。

「まずは図書館の人がどういう図書館を作りたいか、のビジョンをきちんと打ち出すべきじゃないのかな。私たち外の人からはどういう図書館を作ると役に立つのかよくわからないから、図書館の人がまず提案すべきでしょ。」

「気軽に無料で読めることが大事。それが保障されてるなら、今のままでもいいかな。」

ぐさぐさ刺さりつつ、職員の話が出てきたので「図書館の人って司書って言うんだけど、司書って知ってる?」と聞いてみる。

「知ってるけど、どんな仕事をしてるのかはよくわからない。」

なんと、父母ともに司書をしており、仕事の話もたくさん家でしているのに、どんな仕事なのかはよくわからない、と言われてしまった。

悲しい気持ちになりながら、「参考までにどんな図書館があったらいいと思ってるのか教えて」と聞いてみる。

「素人意見だけど、この本はどんな風に役立つのかを教えてくれるイベントをしてくれたり、図書館の人がどんな風に考えているのかをちゃんとわかるように発信してほしい。」

「図書館はあった方がいいけど、自分の読みたい本がちゃんと提供されていればそれでいい。無料で。」

我が家のこどもたちにとっては、自分の欲しい本が気軽に無料で利用できることが何より大事だということがわかった。

自宅にかなりの量の本があり、本であればわりと気楽に買ってもらえる立場のこどもたちであるにも関わらず、である。

そして「図書館の人が、どういう図書館像を持ってるかをまず語れ」と言われてしまった。

そこで私のこれまでの図書館像を振り返ってみる。

図書館は、私にとっては選択肢を増やすツールだ。勉強しなければ、自分の武器は増えないと思っているので、無料で気軽に勉強するためには必要なツールだと思っている。

そして、図書館司書は、図書館を便利に使う方法を伝授するチューターのようなものだと思っている。

私は幼少時から近隣の図書館を利用しているが、どこでも司書さんに新しい本を紹介してもらったり、調べ方を教えてもらったりしていた。この経験で図書館とはこういうものだという印象が植え付けられている。

しかし、30年後の図書館ではどうだろう。

情報は全てオンライン化され、利用料を支払えば、知りたい情報はオンラインチャットのようにすぐに回答してもらえるようになっているかもしれない。

オンラインでブラウジングができて、自分からは手にとらない本もスムーズに手にとれるようになっているかもしれない。

今でさえ電子書籍やデジタルアーカイブ等のオンラインツールが豊富にあるのだから、未来はもっと様々な情報がオンラインで利用しやすくなっているかもしれない。

そんな「かもしれない」をイメージし、整えて発信していくのが「図書館(仮称)リ・デザイン会議」という場なのかな、と思う。

とりあえず、年末だし、冬休みだし、ストーブの前であったまりながら、ぼんやりと「図書館(仮称)」を考えてみよう。せっかくだから初夢で未来の「図書館(仮称)」が出てくるといいな、と思いながら。

2020年12月31日
松岡 章子

この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 継承 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。